校正の仕事はいずれなくなる?将来性やAI時代に求められる能力を解説

校正の仕事は今後も需要があるのか、いずれなくなってしまう仕事ではないのか、不安に感じていませんか。AIの活用が多方面で進む中、校正の仕事もAIに代替されていくのでは?と感じている人も少なくないでしょう。

この記事では、校正の仕事がなくなるといわれる主な背景と、今後も校正の仕事が必要とされ続ける理由をわかりやすく解説しています。AI時代に求められる校正者の能力にもふれていますので、ぜひ参考にしてください。

校正の仕事がなくなるといわれる主な背景

結論からお伝えすると、校正の仕事が消滅することはありません。しかし、世の中では「校正の仕事はいずれなくなる」といわれているのも事実です。この背景として、主に2つの要因が挙げられます。

校正ツールやAIの登場

1つめの要因は、校正ツールやAIを駆使した校正機能が続々と登場していることです。単純な誤字脱字や明らかな文法上の誤りであれば、こうしたツールでチェックできるようになりました。結果として、「必ずしも人が目視で校正しなくてもよい」といわれることがあるのです。

ただし、校正ツールやAIによるチェックは決して万能ではありません。むしろ、ごく限られた用途では効果が得られるものの、分野によっては対応し切れないケースも多々あるのが実情です。

紙媒体の出版物が売れなくなっている

もう1つの理由として、紙の出版物が年々売れなくなっていることが挙げられます。電子書籍やWebサイトで文章を読めるようになり、紙の出版物以外の媒体を選ぶ人も増えているのです。そのため、紙媒体の校正に限れば全体として校正の仕事が減少傾向にあります。

一方で、依然として紙媒体の刊行物がメインの分野も存在します。出版業界全体で見れば校正の仕事が減っているものの、校正の仕事がすっかりなくなってしまったわけではありません。

校正の仕事が必要とされ続ける理由

校正の仕事は、今後も必要とされ続けていくと考えられます。校正ツールやAIが進歩しても、校正者の需要がなくならない主な理由は次の2点です。

ジャンルによっては紙媒体が健在

出版物の中には、紙媒体で刊行する必要があるものも存在します。たとえば、子どもたちが使う教材がその好例です。教育現場でICT教材の活用が広がっているとはいえ、問題集や参考書は依然として紙ベースのものが多勢を占めています。

学習アプリや映像教材が提供されていても、やはり紙のノートに筆記用具で「書く」ことが学習の基本です。近年は二次元コードが誌面に掲載されており、スマホをかざすことで映像コンテンツやARコンテンツを利用できる教材も増えてきました。しかし、あくまでも紙媒体の問題集や参考書が「本体」で、デジタルコンテンツは副次的な位置づけのケースが多く見られます。

機械的にチェックするのが難しい観点も多い

校正する出版物の内容によっては、AIでは対応できないものもあります。たとえば英語の教材を例に考えてみましょう。

実用的な英語として不自然ではないか、といった観点であれば、ネイティブスピーカーの英語を学習したAIによってチェックできます。しかし、英語を第二言語として学ぶ小中学生や高校生向けの教材には、必ずしも実用的な例文が掲載されているとは限りません。学習者の習熟度に応じて、適切な例文を提示する必要があるからです。こういった日本の教育現場に特有の事情を踏まえた校正は、少なくとも現状のAIや校正ツールで対応するのは現実的ではありません。

AI時代に求められる校正者の能力

ここまでに見てきたとおり、AI時代には校正者が必要なくなるのではなく、むしろAIと人間の役割がより鮮明に分かれていくと考えられます。AI時代に求められる校正者の能力とは、どのようなものでしょうか。

特定のジャンルへの深い知識・専門性

AIの学習データが不足しやすい特定のジャンルに関する深い知識や専門性は、校正者に求められる重要な能力になっていくでしょう。

教材の校正であれば、「小学校で扱う配当漢字を学年ごとに把握しているか」「中学教科書別の履修順や用字用語の違いを把握しているか」といったことは、校正者として欠かせない要素です。誤字脱字や基本的な文法の誤りといったレベルではなく、教材に掲載する事項として適切かどうかを見極める能力が求められます。

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依頼者の意図をくみ取るコミュニケーション能力

校正者と聞くと一人で黙々とチェックを進める仕事をイメージするかもしれません。しかし、実際には依頼者の意図をくみ取るコミュニケーション能力が求められる仕事です。

たとえば、教材によって企画の趣旨や表記上の注意点などが異なります。どの教材も一律の観点でチェックするのではなく、企画意図を踏まえて校正しなければなりません。よって、依頼者の意図を理解するためのヒアリング力や質問力が問われます。こういった能力は、AIでは代替できないスキルの代表例といえるでしょう。

まとめ:教材校正の仕事はなくならない

校正の仕事がいずれなくなるといわれているのは、単純な誤字脱字などのチェックが不要になりつつあるからです。専門的な知見が求められる校正に関しては、依然として人の目によるチェックが欠かせません。AI時代に突入した今だからこそ、校正者として求められる知識をいっそう深め、専門性に磨きをかけていく必要があるでしょう。